「胸毛やひげが濃いとハゲやすくなる」――
そんな噂を聞いたことがあるという人も、少なくないのではないでしょうか?
しかしもしそれが事実だとしたなら、運命に従わないといけないのか……とつい悲観的になってしまう都市伝説。です。
体毛は濃いのに、髪が少ない。そんなジレンマに苦しんでいるダンディーな男性方にとっては、非常に興味深い噂です。果たして、この都市伝説は本当なのでしょうか。
胸毛やひげが濃い人は…ハゲる
一般的に、胸毛やひげなどの体毛は男性ホルモンが、髪の毛には女性ホルモンが影響しているといわれています。女性は髪が長く、男性は体毛が濃い、というイメージは、ホルモンの影響によるもの。しかし男性でも体毛が薄い方や、女性でも薄毛の方はいます。ホルモンの量・酵素・働く力などが人それぞれ異なるため、「胸毛やひげが濃い=薄毛」とは一概には言えないのです。
ただし、男性ホルモンの「ジヒドロテストステロン」に薄毛促進作用があることには変わりありません。体毛の濃い方は、薄毛を予防する女性ホルモンよりも、男性ホルモンに反応する酵素量が多いことが要因の1つとして挙げられます。また、他の人と比べて男性ホルモンの分泌量が多い可能性大。
したがって確実100%とは言えませんが、胸毛・ひげなどの体毛が濃い方は、体毛が薄い方と比べ、ハゲやすい体質というのが、科学的な観点からいえます。
薄毛の人は胸毛やひげが濃い?
逆の視点から考えてみましょう。薄毛の人は、胸毛やひげが濃いでしょうか。薄毛の人は、女性ホルモンより男性ホルモンの分泌量が多いか、男性ホルモンに反応する酵素を多くもっているということになります。上記の性質を考えると、当然胸毛やひげが濃くなるはずです。統計を取ってみなければ分からないことではありますが、某ハリウッド俳優やサッカー選手など、薄毛で思い浮かぶ方は確かに、胸毛が濃いように感じます。
薄毛の天敵・ジヒドロテストステロンって?
上記で登場した、男性ホルモンのジヒドロテストステロンは二つのものから形成されています。それが「テストステロン」という男性ホルモンと、「5αリダクターゼ」という酵素です。本来、テストステロンは、男性にとって男性特有の骨格形成や筋肉をつけるために、必要不可欠なものになります。しかし問題なのが5αリダクターゼの方なのです。この5αリダクターゼが大量分泌してしまうと、テストステロンと合体して薄毛の天敵・ジヒドロテストステロンに変化してしまうのです。
ジヒドロテストステロンは、悪玉男性ホルモンと呼ばれる非常に厄介なものなのです。テストステロンがジヒドロテストステロンに変化してしまうと毛根に悪さをして、発毛の邪魔をし始めます。すると栄養を受け渡す毛細血管の血流不足を招き、髪の毛の栄養不足と酸素不足を引き起こし、細く弱い髪の毛のまま成長させてしまいます。これが継続していくと、徐々に細く弱い髪の毛が増えてしまい、薄毛になってしまうのです。
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男性ホルモンの多さと薄毛の因果関係
具体的に男性ホルモンが多いほど薄毛になりやすいのかを検証していきましょう。 ズバリ関係ありでしょう。
正確にいうと、男性ホルモン(テストステロン)が多いほど、5αリダクターゼと大量に合体する可能性が高くなるということです。もしもテストステロンが少なければ、5αリダクターゼと合体する可能性は低くなり、合体したとしても量は少ないので目に見えた影響(薄毛)を受けにくくなります。しかしテストステロンが多いと、ジヒドロテストステロンに変化して大量分泌してしまう可能性は上がります。
ではジヒドロテストステロンを食い止める方法は、現段階であるのでしょうか?ジヒドロテストステロンさえ分泌させなければ、薄毛にならない訳だし……
ジヒドロテストステロンを食い止めるAGA治療
ジヒドロテストステロンの大量分泌から起こる薄毛のことを、男性型脱毛症・AGAと呼びます。AGAは名前の通り、男性特有の脱毛症で、多くの男性の薄毛の原因がAGAです。しかし、そんな厄介なAGAも現在、治療方法が確立されているのです。それがAGA治療というものです。
AGA治療は専門のクリニックで、風邪や怪我と同じように医療機関で診察を受けるところから始まります。そこで初めてAGAなのか、否かを判断してもらうのです。
基本的に治療は、飲み薬と塗り薬を処方されて、それを使用しながら病院に通い経過を観察していくことになります。治療年月としては、人によりAGAの進行具合とタイプ、どの治療がベストなのかも変わってくるのでとりあえず1年程度と思っていてください。ちなみにこの治療方法は、AGAにしか有効ではありません。他のことが原因の脱毛症には効果はありません。
薄毛を食い止める具体的なメカニズム
AGA治療の第一段階は、ジヒドロテストステロンにより乱れたヘアサイクルを正常に戻すこと。これに効果を発揮するのが飲み薬です。
この飲み薬というのは、5αリダクターゼの動きを抑えるものなのです。5αリダクターゼの動きが抑えられれば、徐々にテストステロンとの合体がなくなっていきます。すると乱れていたヘアサイクルは徐々に戻り始め、細く弱い髪の毛だったものが、栄養と酸素を正常に取り込み太く強い髪の毛へ徐々に変わっていきます。その段階でさらに、栄養を与えて発毛を促すのに必要なのが塗り薬なのです。徐々に正常なヘアサイクルを取り戻すために、中からだけではなく外からも栄養を与えるのです。
理由として飲み薬で正常なヘアサイクルを取り戻しても、栄養が不足したままでは育つものも育ちません。この2つがセットで初めて効果を発揮するのです。
ヘアサイクルが戻っても胸毛やひげの量は変わらない
ちなみにジヒドロテストステロンの排出が収まり、ヘアサイクルが正常に戻って薄毛が解消されたとしても胸毛やひげが薄くなることはありません。
これは髪の毛だけに対しての治療。胸毛やひげを濃くする原因のテストステロン自体の分泌量は変わってはいないのです。薬で分泌を抑えているのは、あくまで5αリダクターゼの方なので、髪の毛は太く強くなりますが、胸毛やひげには影響はありません。これは少し残念ではありますが……。ということは治療を途中でやめてしまうと、5αリダクターゼがまた大量分泌されて、テストステロンと合体してしまい、ジヒドロテストステロンも大量発生してしまう訳です。
体毛が濃い=薄毛なのか?
結局のところ、体毛が濃いと薄毛になるのか?
体毛が濃いから薄毛になるというより、体毛が濃いと薄毛になる可能性は高くなるよということです。
体毛の濃さの原因はテストステロンの多さ。テストステロンが多い男性は、骨格も体毛も濃く男らしい人が多いです。
逆にテストステロンが少ない人は、体毛が薄く、骨格が華奢で中性的な顔立ちの人が多いのです。しかし男らしかった男性がAGA治療を終えて、ヘアサイクルが戻ったからといって体毛が薄く、骨格が華奢で中性的な顔立ちに変化することはありません。これはテストステロン自体の数には、何の影響もないからです。AGA治療を終えた人は、髪の毛は多いのに体毛も濃いという特徴に変わるだけです。
まだまだ一般的ではないAGA治療
AGA治療はまだまだ一般的とは言えません。その理由として、男性特有に脱毛症にも関わらず、病気のようで病気ではないという点にあります。AGA治療のクリニックというのは年々増えていて、AGAになってしまうメカニズムというのは解明されているのに、治療を受けるとなると残念ながら医療保険が使えません。まだまだ美容整形と同じような立ち位置にあるといっていいでしょう。
しかし医療保険は使えなくても、治療がうまくいかなかった時のための返金制度を採用しているクリニックもあります。このことにより、医療保険が使えなくて、リスクが高い治療という概念は現在、消えつつあります。
体毛が濃い方の薄毛対策
AGA治療を受ける前に自分自身で、取れる最低限の薄毛対策もあります。男性ホルモンと女性ホルモンはバランスを取り合って共存しています。ハゲやすい体質の方は、男性ホルモンの分泌量を下げることが出来れば、ハゲる可能性を下げることができるそう。過剰なストレスや現在、ジムに通いながらのトレーニングが非常に流行っていますが、それも薄毛予防には良くない面もあります。負荷がかかるトレーニングをしすぎると男性ホルモンの活性化に繋がり、テストステロンが5αリダクターゼとの合体を誘発してしまいます。
そのことから高負荷の筋肉トレーニング等をなるべく避け、交感神経をあまり刺激しない生活を送ることが、予防の第一歩となります。